解決事例報告

ネットでの匿名による誹謗中傷被害について発信者情報開示で解決

2019.01.06 安原邦博

ネットで、悪口、名誉毀損、ヘイト・スピーチなどの誹謗中傷をされる被害が増えています。
そういった場合、加害者の名前と住所がわかっていれば、誹謗中傷の削除や謝罪、損害賠償等の請求を直ちにできますが、多くの場合、ネットでの誹謗中傷は匿名でなされるため、加害者の名前や住所がわからないという問題が生じます。
ネットで誹謗中傷をした者の氏名や住所の特定には、プロバイダ責任制限法(正式名称:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に基づく情報開示の請求が大きな力を発します。
一定の要件を満たせば、SNS、ブログの運営業者やプロバイダ等が保有している情報を開示させることができるのです。

最近、私が手がけたのは、ツイッターでなされた匿名の者による誹謗中傷事件です。
ツイッターでの誹謗中傷の場合、まず、ツイッター社の本社(米国カリフォルニア州)に対して、プロバイダ責任制限法に基づき情報開示の仮処分を申立てます。
ツイッター社は誹謗中傷をしたアカウントを使用している者の名前や住所は保有していないので、この時点で開示させることができるのは、そのアカウントで使用されたIPアドレス関連のものだけです。
IPアドレスは、単なる文字列(プロバイダがネット・ユーザーに個別に配分する特定の番号)で、それだけでは加害者の特定に至りませんから、次に、IPアドレスからプロバイダを割り出し、そのプロバイダに対して、プロバイダ責任制限法に基づき、そのIPアドレスを配分した契約者の氏名と住所の開示請求をしました。
この段階では、いきなり裁判をするのではなく、割り出した各プロバイダに対してまず手紙を送って、任意に情報開示をするよう請求し、これに応じず開示を拒否してきたプロバイダに対してのみ、情報開示の裁判を提起しました。
今回は、開示拒否をしてきたプロバイダに対する裁判をしている間に、それまでの手続きで得られた情報をもとに裁判外でも調査していたところ、それによって加害者の特定に成功しました。
結果、加害者に対して、被害者への謝罪、ツイッター上での謝罪文の掲載、及び、損害賠償金の支払をさせる示談を成立させることができました(示談時点で誹謗中傷をしたツイート自体は削除済み)。

このように、ネットでの匿名の誹謗中傷でも解決できることがあります。
ただ、裁判外や裁判上で様々な法的手続きを経る必要があるため、お困りの方は、是非、弁護士にご相談ください。