解決事例報告

借入や担保設定、意思能力を欠いた状態での契約は無効

2009.06.29 中西基

ご本人は、中等度の知的障害(発達年齢7歳)がおありの方でした。日常生活や日常会話は可能で、亡くなった親が遺した自宅に1人で生活していました。

ある日、ご本人の自宅に金融業者がやってきて、「家を明渡してくれ」と言ってきました。

調査したところ、自宅の土地建物に金融業者が譲渡担保(所有権移転登記)を設定していることが判明しました。また、金融業者はご本人の署名押印がある借用書(800万円)を持っていることも判明しました。その後、多数の消費者金融からの督促状が届くようになりました。

どうやらご本人は、知り合いを通じて紹介された人物から、「迷惑は掛けないから、名前を貸してちょうだい」と言われて、言われるがままに借用書や譲渡担保設定契約書にサインしていたようです。

契約を締結するためには、「意思能力=自分の行為の結果を正しく認識し、これに基づいて正しく意思決定する精神能力」が必要です。意思能力を欠いている状態でなされた契約はそもそも無効です。

この事案では、ご本人は消費者金融業者からお金を借りたり、ましてや自宅に譲渡担保を設定したりすることについて、「意思能力」を欠いている状態でした。少額の借入(10万円から30万円)だった消費者金融とはすべて示談しましたが、自宅を担保にとっていた金融業者とは示談がまとまらずに、抹消登記手続請求・債務不存在確認の訴えを提訴しました。

なお、提訴に先立って、成年後見制度の申立を行い、保佐開始決定がなされました。

裁判所(大阪地裁岸和田支部)は、当方の主張を認め、意思能力を欠いていたと認定して、借入も担保設定もいずれも無効だとする判決を言渡し、無事に、親が遺してくれた唯一の財産である自宅を守ることができました。