解決事例報告

借地借家Q&A その4(敷金返還)

2019.05.27 谷真介

Q 借家に入居する際に敷金として30万円を支払いました。契約書では退去時に10万円を差し引く(敷引き)と記載されています。このたび引っ越しをすることになったのですが,家主からはクロスや畳の貼り替えや鍵の交換に費用がかかるという理由で,敷金を返してくれません。返還してもらえないのでしょうか。

 

A 敷金のうち敷引きを控除した金額は,原則として返還を請求できます。

 

「敷金」(保証金とも呼ばれます)は,賃貸借契約に伴う賃借人のあらゆる義務(賃料支払義務や原状回復義務など)を担保するために,契約時に賃借人が差し入れるお金のことです。
例えば,賃料の不払いがあった場合には,家主は敷金をもって不払い賃料にあてることができます。

一方,家主は賃借人の退去時には,賃借人に敷金を返還する義務があります。

賃貸借契約終了時(退去時)に家主が敷金から一律に一定の金額を控除する「敷引き」も一般に認められています。
ただし,家賃の額と比べて敷引きがあまりに高い場合には,敷引き特約が無効になる場合もあると解されています(消費者契約法10条)。
設例の場合は敷引き額は10万円程度ですので,有効となるでしょう。

賃借人は退去の際に建物を「原状回復」して家主に返還する義務があります。
しかし,通常使用してできる汚れ等(通常損耗といいます)についてまで元どおりに戻す必要はありません。
設例では,長年居住していたということですのでクロスや畳みが一定程度汚れるのは当然であり,貼り替えの費用を賃借人が負担する必要はありません。鍵の交換費用は,賃貸借契約書に借家人負担とされており合理的な金額の範囲内であれば負担する必要がありますが,そのような特約がなければ賃借人が負担する必要はありません。

家主に敷金の返還を求めても返還してくれない場合には,弁護士にご相談ください。

 

 

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