解決事例報告

借地借家Q&A その5(家主からの解約申入れ)

2019.06.27 谷真介

Q 10数年前から夫婦で借家に入居しました。家賃は毎月きちんと支払っています。契約書はなく,毎月の家賃は手渡しです。先日,家主から,「息子夫婦が海外赴任から帰ってくる。この借家に住まわせたいのであと3か月で出て行ってくれ」,と言われました。出ていかなければいけませんか。

 

A 家主側の「正当事由」が認められる可能性は低く,立ち退く必要はありません。
立ち退くとしても,期間の猶予や相当額の立退料を求めましょう。

 

借家契約について,賃貸期間が定められていない場合(本件では契約書がないので,賃貸期間が定められていないものと思われます)には,家主が解約しようと思うと6か月前に申入れをしなければなりません(借地借家法27条1項)。
本件でも家主の解約申入れから6か月間は立ち退く必要はありません。

解約申入れから6か月が経った場合であっても,借主が契約違反(家賃滞納など)をしていないときは,家主が立ち退かせるには「正当事由」が必要です(借地借家法28条)。

家主側に「正当事由」がなければ,いくら出て行って欲しいと言われても,借主は賃料を支払って住み続けることができます。

家主が自分で使いたいとか,家族に使わせたいということが「正当事由」として主張されることがありますが,例えば家主に重度の介護が必要で,家族に近隣に住んでもらう必要がある場合など,高度の必要性がなければ「正当事由」は認められにくい傾向にあります。
また、認められる場合でも,相当額の立退料を前提に家主側の「正当事由」が認められることがほとんどです。

本件では,借主は立ち退きたくなければ賃料を支払って住み続ければ良いと思います(家主が家賃受け取らない場合は法務局に供託しましょう)。
この際立ち退いてもよいと考える場合でも,立退きまで期間の猶予を求め,また相当額の立退料を請求しましょう。

立退きを拒否しているのに家主からしつこく立ち退くよう言われたり,立退料の額についてどれくらいが相当かがわからないなどの相談がありましたら,弁護士にご相談ください。

 

 

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