解決事例報告

相続の基礎Q&A4「相続放棄」

2020.04.23 西川翔大

Q4.【相続放棄~期限と法定単純承認にはご注意を!】

私の夫が去年の10月に亡くなりました。夫の遺品を整理していると、今年の3月に夫に300万円の借金があることが発覚しました。私としては返すお金もないので相続放棄をしようと思っています。また、夫の死後、乗らなくなった夫名義の車も売却してよいのでしょうか。

 

A 相続放棄

①相続放棄の期限

相続放棄の手続は、原則として「相続の開始を知った時」から3カ月以内に、家庭裁判所に相続放棄申述書及び戸籍謄本等の必要書類を提出しなければなりません。また、相続財産を調査する必要がある場合には、「相続の承認又は放棄の期間の伸長」という申立てをすることによって期限を延長することができます。

そうすると、相談者は、夫が亡くなってから3カ月以上経過し、伸長手続もとっていなかったため相続放棄ができないのでしょうか。

相続放棄の期限が過ぎてしまっていても「相続財産が存在しないと信じており、そう信じていたことに相当の理由がある場合」には例外的に相続放棄が認められる場合があります。したがって、相談者が夫の借金の存在を知らなかったことに相当の理由があると家庭裁判所が認めた場合には、債務の存在を知ったときから3カ月以内であれば相続放棄をすることができます。

②法定単純承認

相続人が被相続人の相続財産の全部又は一部を処分又は隠匿等した場合には、「法定単純承認」として自動的に単純承認(全ての権利義務を承継すること)したものとみなされ、相続放棄をすることができなくなります。したがって、相談者が夫名義の車を売却すると、法定単純承認となり、相続放棄をすることができなくなる可能性があるので注意が必要です。