解決事例報告

精神障害のある方が万引きで逮捕。刑期軽減のため精神保健福祉士らと連携

2015.10.06 中村里香

窃盗罪(万引き)で現行犯逮捕・勾留された方(後に起訴されました)より、刑事弁護の依頼を受けました。

この方には精神障害があり、取調べに対してすらすらと受け答えすることは困難だと考えられましたので、供述調書が適正に録取されるよう、頻繁に接見に通ってアドバイスを行うとともに、早期に検察官に申入れをし、取調べに際しての配慮を求めました。

その結果、この件で検察官が録取した調書は「一問一答式」であり、通常の調書よりも配慮された形となりました。この段階で、送致された事件のうち、被害弁償を受け入れてくれた1件につき、被害弁償も行っています。

また、勾留中の投薬などが適切になされるようにするため、主治医に協力をお願いし、留置施設に対して医療情報の提供を行いました。

同人には複数の同種前歴・前科があり、本件も執行猶予中の行為であったため、起訴され実刑になることは避けられない事案でした。
 
そのため、刑務所に収容されるまでの間に主治医などと相談しておく機会を設ける必要があり、保釈が急務となりました。実刑が確実に見込まれる事案での保釈は困難かと思われましたが、起訴後2度にわたって保釈の申立てを行い,裁判官との面談を経て保釈が許可されました(ただし、保釈金は相場よりもかなり高額でした)。

また、刑期を1日でも短くするため、被告人の精神障害者手帳などを証拠として提出するとともに、万引きの被告人の精神障害について、被告人質問を詳細に行いました。また、被告人と関わりのあった精神保健福祉士、及び社会福祉士と面談し、今後の方針などについて聴取りを行い、被告人の社会復帰後の環境調整がなされていることについても、弁論要旨において主張しました。

その結果、「精神障害によって行動制御能力に問題があった可能性がある」と認定され、求刑を大幅に下回る判決を得ることができました。

精神障害のために万引きを繰り返してしまっている被告人につき、「犯罪傾向が進んでいる」と安易に認定されてしまうことを何としても避けたいとの一心で弁護活動を行いましたが、一定の成果が得られたと思われます。