解決事例報告

給与ファクタリング、業者に1円も支払わずに解決!

2020.06.01 名波大樹 西川翔大

1 給与ファクタリングとは

給与ファクタリングとは、①給与の支払日よりも先に、労働者が給与ファクタリング業者(ヤミ金業者)に給与債権の一部(例えば4万円)を2万円など安値で買い取ってもらい、②給与支払日に、労働者が給与ファクタリング業者(ヤミ金業者)に本来の金額(4万円)を支払うというものです。「給料の即日現金化」「給料の早期買い取り」などと広告を行い、最近利用者が急増しています。

しかし、給与ファクタリング業者からは超高金利の手数料を請求され、支払わなければ「勤務先に連絡するぞ」と携帯電話に何度も脅しの連絡があり、自宅に押しかけてくるなどの被害が報告されており、その実態はヤミ金融です(下記リンク参照)。

https://www.kitaosaka-law.gr.jp/post-info/「給料ファクタリング」にご注意ください/

給与ファクタリング業者は、自分たちは貸金業者でないから高額の手数料を取っても違法ではないと主張しています。しかし、金融庁は、「業者が労働者に金銭を交付し、労働者に対して請求する」という実体から、貸金業法第2条第1項の「貸金業」に該当するものという意見を公表しています。また、東京地裁令和2年3月24日判決においても「給料ファクタリングの仕組みは、・・・貸金業法や出資法にいう『貸付け』に該当する」と判断されています。

それにもかかわらず、給与ファクタリング業者は、貸金業登録を行わずに、出資法に違反する高金利な金銭の取立てを行っており、そのような給与ファクタリングは明らかに違法です。

給与ファクタリングによる被害は都市部で急増しており、2020年5月14日には東京地裁で給与ファクタリングによる被害金の返還を求めて集団提訴がなされました。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59038550T10C20A5CC1000/(日本経済新聞)

 

2 事件概要

相談者は、計8社の給与ファクタリングを利用しており、例えば、ある業者については、給料のうち5万円を給料支払日よりも先に4万円で給与ファクタリング業者が買い取り、支払期限に5万円を支払うという「賃金債権譲渡契約」や「ファクタリング契約」を締結していました。

8社のうち2社については支払期限を過ぎており、業者から頻繁に携帯電話に連絡があり、まだ勤務先に連絡はなかったものの「支払わなければ勤務先に連絡するぞ」などと脅され、業者から執拗な取立てがなされていました。

 

3 弁護士の対応

(1)受任通知の発送

相談を受けて、ただちに弁護士から以下のことを記載した受任通知を各業者の事業所地に発送しました。

  • 給与ファクタリングは、金融庁の照会や東京地裁令和2年3月24日判決においても「貸金業」に該当すること、
  • 業者が行なっている金銭の請求は出資法に違反する高金利のものであり、業者が貸金業登録を行っていないことから明らかに違法であること
  • 一切支払いには応じることはできないこと
  • 業者から相談者に対して、今後一切請求しないこと
  • 業者が回収した金銭がある場合には相談者に対して返還すること

 

(2)口座凍結要請

また、受任通知の発送に並行して、業者が利用している各金融機関に対して、貸金業登録の行われていない違法な業者によって預金口座が利用されているため、預金口座を直ちに凍結するように要請する文書を送付しました。

金融機関によって対応が異なりますが、多くの金融機関で業者による利用がなされていることの確認を終えると、口座凍結を実施しました。

 

(3)警察への被害届

さらに相談者にはすぐに警察に被害届を提出してもらい、弁護士からも警察に対して、違法な給与ファクタリング業者が各金融機関の口座を利用している旨の情報提供を行いました。

 

4 給与ファクタリング業者の対応と事件の解決

その後、弁護士が給料ファクタリングと交渉した結果、全ての業者が①今後相談者へ支払請求をしないこと、②業者から相談者へ今後一切接触をしないことを約束しました。

以上より、相談者は1円も金銭を支払うことなく、給与ファクタリング業者からの取立ても受けなくなりました。

 

5 給与ファクタリングで悩んでいる方へ

給料ファクタリングをちょっとした給料の前借り感覚で利用してしまい、その後業者に対して金銭を支払ってしまったり、業者からの執拗な取立てや脅しに悩まされる方も少なくありません。

そのような違法な給与ファクタリング業者からの執拗な取立てをやめさせたい方は、経験のある弁護士が対応しますので、ぜひ一度ご相談ください。