解決事例報告

裁量労働制を理由に残業代なし、その上一方的に賃金を減額

2011.05.14 谷真介

依頼者は3か月の試用期間を経て正社員となりましたが,会社は思ったような業績が上げられていないとして,依頼者の賃金を2回にわたり一方的に減額しました。

また,専門職種の裁量労働制を採用しているとして,残業代を一切支払っていませんでした。依頼者は減額された賃金では生活できないとして会社を退職し,個人加盟の労働組合に加入して会社に対して減額分賃金と未払残業代の支払を求めましたが,会社がこれを拒否したため,私に依頼をされ裁判を起こしました。

そもそも労働条件の中核的な条件である賃金について,使用者が一方的に減額することは基本的にできません。例外的に賃金減額が有効になる例としては,就業規則を一方的に変更した場合,降格処分に伴って減額した場合,労働者の個別同意がある場合が考えられます。

本件では会社は,依頼者が会社の減額に同意をしたと主張しました。残業代については,専門職種の裁量労働制を採用するには厳格な要件を満たし,手続を経ることが必要ですがこの会社は要件を満たしておらずまた手続も経ていませんでした。

裁判所において主張を尽くしたところ,裁判所は賃金減額について依頼者の個別同意は認められない,専門型裁量労働制も認められないという心証を開示し,会社に対してこれらを支払うよう和解を強く勧告し,会社もそれに応じざるをえませんでした。

最終的に,訴訟提起から比較的早期に和解が成立し,依頼者の納得のいく解決ができました。