解決事例報告

見に覚えのない理不尽な理由で懲戒解雇…地位保全の仮処分申立

2009.01.27 中西基

歯科医院で歯科衛生士として勤務していた方が、ある日突然、懲戒解雇を言い渡されました。理由は「医師の医療命令を無視して処置を行った」などというものでしたが、本人としてはまったく身に覚えがない理不尽な理由でした。

本人が雇用主である医師(院長)に抗議したところ、医療命令無視という主張は撤回され、その代わり「業務命令を遵守しなかった」という理由に差し替えられました。

懲戒解雇を通告された1週間後に相談を受け(06年9月)、直ちに、内容証明郵便で解雇無効を主張するとともに、裁判所に地位保全の仮処分の申立を行いました(06年10月)。

裁判所では3回の審尋を経て、第4回目の期日で、解雇を撤回して一定の解決金支払うことを条件に会社都合による任意退職に応じるという和解が成立しました(06年11月)。

相談を受けてから解決するまで3ヶ月弱でしたが、早期に解決できたケースだと思います。このケースは労働審判制度が導入される以前のケースでしたので仮処分手続を選択しましたが、現在では労働審判制度を利用することで早期に解決することも可能です。

しかし短期間といっても、数ヶ月間は収入が途絶えるわけですから、本人にとっては決して短い時間ではありません。

そのような場合、解雇を争っている期間中も、雇用保険失業給付の「仮給付」制度を利用することが可能です(ただし会社側が懲戒解雇を主張している場合には、「重責解雇」にあたるとして待機期間中は仮給付すらも受けられない場合もありますので、注意が必要です。その場合には、会社やハローワークと交渉が必要になります)