解決事例報告

身に覚えがないクレームで始末書提出。拒否すると退職を迫られ…

2015.10.06 中村里香

Gさんは、正社員として経理事務の仕事をしてきた方でした。

Gさんは,会社から、クレームがあったとの理由で始末書の提出を求められましたが,身に覚えのないことだったので納得できず,始末書の提出を拒否していました。すると,上司から,始末書を書くか退職するかの二者択一を迫られ,結果的に,Gさんは「だったら退職します」と言ってしまいました。

Gさんはその後すぐに「退職」を撤回しましたが、会社側は「いったん退職と言ったではないか」とこれに応じず、一方的に,Gさんが自主退職したという扱いをしてきました。
 
本件のように、一時的に追い込まれて「退職します」と口走っただけでは、そもそも「退職の意思表示」があったのかすら疑わしいといえます。また、仮にそのような「退職の意思表示」があったとしても,客観的に明確な意思表示とはいえず、無効です。

とはいえ、本件は交渉では解決しそうになかったことから、法的手続を取ることとしました。本件のようなケースでは、従業員たる地位の確認を求めることになります。

Gさんはすでに再就職を目指して求職活動をしておられ、早期解決を望まれていたことから、労働審判を申し立てることとしました。

労働審判においては、裁判官及び審判員から、本件では有効な退職の意思表示があったとはいえないとの心証が最初から開示され、相手方を説得してもらうことができました。

その結果、本件は第2回期日で相応の水準の解決金を得る形で和解が成立しました。労働審判で、早期に柔軟な解決ができた事例でした。