解決事例報告

遺産分割の協議。納得のいく進め方

2012.02.02 森平尚美

戸籍上のご親族が亡くなられても、様々な従前の経緯から、その方の亡くなられる前後については詳細を把握できないというケースが多くあります。大抵の場合は、金融機関に預貯金等があり、手続き上の協力が必要となるために、疎遠だった親族から音信があって判明するのが通常です。

この場合、従前の生活状況がわからないために、連絡してこられた親族の主張を前提に遺産分割協議をなさる方も多いかもしれません。

もし、故人との関係や、連絡してこられた方との関係等で御本人がご納得された場合であれば構いませんが、場合によっては、遺産の全容を把握させてもらえないままに一方的な主張をなされている可能性もあります。

何らかの疑問がある場合には、相続人の資格において、可能な限りで金融機関その他から情報を取り寄せて、相手方に説明を求めることも可能ですので、後日、協議内容に疑問を感じそうな場合には、事前に可能な範囲で調査して、納得できる遺産分割協議をされることをお勧めいたします。

この点、よく相手方親族から「亡くなってから3か月以内に決めないと効果がなくなるから」などとの言葉で、協議書の作成を急かされるケースもあるようですが、相続開始を知ってから3か月、という制限は、あくまでも借金等が多くて相続放棄をしなくてはならない場合の家庭裁判所との関係での制限期間です。

また、税金申告の期間制限も、仮に徒過した場合には、一旦は法定相続分で申告しておいて、後日に協議内容に従って修正申告する、という手法が可能です。
したがって、「期間制限があるから急いでこの内容で遺産分割協議書にサインして」と言われた場合には、内容が不平等ではないかを一度吟味される必要があると思います。

この場合、まずは必要な情報の開示をお願いして、もし先方が渋るようであれば、ご自分の側で情報を可能な限り入手して、納得のいく遺産分割協議をなさるのが良いと思います。

ただし、民法上は確かに法定相続分が決まってはおりますが、協議が決裂して家庭裁判所での遺産分割調停や審判等に移行しますと、解決までに数年単位など長時間を費やしてしまうケースも多々あります。

従前の経緯や生活実態からみて、ご自身と故人との関わりが希薄なケースの場合には、故人の遺産形成や日頃の生活に何らかの協力があった親族との間においては、協議時に柔軟な譲歩をなさることも早期円満解決につながりますので、この点も併せてご一考頂けますと幸いです。