解決事例報告

能力不足を理由に解雇、違法な未払い残業代も

2011.10.01 谷真介

依頼者は,某販売会社の営業社員として働いていた方で,営業に向いていないという理由で倉庫に配置転換され,内勤でもやる気がみられなかったとして解雇された方でした。

また会社では残業代が45時間までは基本給に含まれているとして,全く支払われていませんでした。

労働契約法16条では,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当と認められない場合は解雇は無効であると定められています。

能力不足の解雇の場合,仮に能力不足の点があったとしても,会社は能力向上のための方策として何らかの注意指導を行い,それでも向上がみられない場合に初めて,有効に解雇できます。

しかしこの方の場合は,能力不足であったかどうかも不明ながら,少なくとも改善のための注意指導は一度もありませんでしたので,解雇は明らかに法的には無効でした。

また残業代についても,定額払いとするには残業代部分とそれ以外が明確に区別されていなければなりませんが,本件ではその区別は極めて不明確でしたので,残業代の不払いもまた違法なものでした。

依頼者は早期の解決を希望されたため,労働審判を起こすことにしました。こちらのほぼ言い分どおり,解雇無効であり解決金を支払うことと,残業代を支払うことの労働審判が出ましたが,代理人弁護士をつけていなかった会社が異議を申し立てて本裁判に移行しました。

本裁判では会社に代理人弁護士がつき,結局労働審判どおりの内容で和解が成立しました。