北大阪セミナー「IRカジノ住民訴訟と万博問題」のご報告
1 はじめに
2025年6月13日(金)18時30分から、北大阪セミナー「IRカジノ住民訴訟と万博問題~住民訴訟で明らかになった実態と万博現地調査」を北大阪総合法律事務所とZoom併用で開催しました。
今回は、IRカジノ住民訴訟の第2グループの弁護団員である米田弁護士から、現在のIRカジノ住民訴訟の状況と万博の現地報告、現在生じている万博関連の問題について報告していただきました。
2 IRカジノ住民訴訟の状況
そもそも、IRカジノに関連する住民訴訟は、現在3つのグループから提訴されています。
第1グループは、大阪市の当時の松井市長が「カジノに税金は投入しない」と公約しながら、カジノ用地の地盤改良費として約788億円を負担するような借地権設定契約を締結することが違法であるとして、借地権設定契約の締結を差し止める訴訟を起こしました。
第2グループは、大阪市が約788億円を負担して高層ホテルに建設可能な土地にしておきながら、賃料428円/㎡とするのは「適正な対価」ではなく違法であり、借地権設定契約の締結を差し止める訴訟を起こしました。
第3グループは、IR事業者が地盤改良工事をするために大阪市がカジノ用地を無償で貸すのは違法であるとして使用貸借契約を差し止める訴訟、そして土地の引渡しと登記を差し止める訴訟を起こしました。
さらに、令和5年9月28日に実際に借地権設定契約が締結されたことに伴い、第1グループ、第2グループから損害賠償請求訴訟が提訴されており、現在IRカジノ住民訴訟は6つの訴訟が係属しているという複雑な状況となっています。
3 第2グループの主張内容
米田弁護士からは、主に第2グループの訴訟における主張内容についてご紹介いただきました。
第2グループが主に主張している内容として、
①IR用地として貸し出すための不動産鑑定であるにもかかわらず、「IR事業を考慮外」として鑑定している点、
②新駅(夢洲駅)が開業予定であるにもかかわらず、新駅の開業を考慮せずに、徒歩で40分以上かかるコスモスクエア駅を最寄駅として鑑定している点、
③完成イメージ図ではきらびやかな高層ホテルが描かれているのに、最もその土地を有効に活用できる使い方をイオンモールなどの低層ショッピングモールとしている点
など不動産鑑定額が格安になるような不当な鑑定手法が用いられていることを指摘しました。
また、④不動産鑑定において、各業者が独自に取引事例や鑑定手法等を採用するため、不動産価格が一致することはほとんどないにもかかわらず、最初の鑑定では4業者のうち3業者の不動産の基礎価格や賃料価格等が一致しており、「奇跡の一致」などと報道されている点、
⑤情報公開によって明らかになったメールからは、鑑定業者2社が同じ取引事例を採用し、しかも通常の鑑定業者であれば犯し得ない初歩的なミスまで一致しているということが発覚しており、
独立して中立的な立場から行わなければならない不動産鑑定の「鑑定談合」が疑われることを指摘しました。
4 万博会場からの報告と様々な問題について
次に、米田弁護士から、現在開催されている万博会場に実際に行ったときの様子を、写真を交えて報告していただきました。
大屋根リングに上るとIR用地の工事状況が確認することができたものの、まだほとんど進んでいない状況であったり、
メタンガスの警報機が各地に設置されており、「警告音が鳴ったら連絡するように」と記載されているにもかかわらず、一見して連絡先が分からない状況になっていたり、
日差しから身を守れない休憩所、日陰にならない竹のベンチなど今後暑くなる中で身を守れるのか疑問な会場の状況を報告していただきました。
さらに、現在生じている万博関連の問題として、メタンガス、ユスリカ、レジオネラ属菌、万博工事代金の未払いの問題など様々な問題が生じていることを説明していただきました。
5 さいごに
今回、Zoom参加や事務所のメンバーも含めて17名もの方に参加していただきました。
会場には「夢洲カジノを止める大阪府民の会」の方にも複数参加していただき、質問や活発な意見交換が行われました。
万博もIRカジノの問題も、広く大阪市民の方に知らせていくために地道な活動をしていくことの重要性や、住民訴訟で問題を追及していくこともますます重要となることなどを確認することができ、非常に有意義なセミナーとなりました。