北大阪セミナー「市民活動と『政治的中立』」のご報告
2025年5月16日(金)18時30分~、「市民活動と『政治的中立』」について北大阪セミナーを開催し、谷弁護士が報告しました。
現在、市民活動を行う団体に対して自治体が援助をすることは「政治的中立性」を害するという理屈で、自治体が公共施設や公用財産の使用を拒否したり、後援を拒否したり、公刊物への掲載を拒否するといったこと全国各地で起きています。
その結果、市民活動を行う団体は、公共施設の利用を続けるためや自治体に後援してもらうため、刊行物への掲載をしてもらうために、自治体に忖度して、活動内容をあたりさわりのないものにするといった、萎縮効果が生じています。これは、日本国憲法21条が保障する表現の自由を制約する問題です。
今回の北大阪セミナーでは、「政治的中立性」というマジックワードがはびこることによって、市民活動が委縮させられている状況にあることを、具体的事例の報告とともに解説しました。
日本国憲法21条は、「表現の自由」を基本的人権として保障しています。表現の自由は、民主主義の実現にとって重要な役割を果たすものです。それぞれ色んな意見を持っている私たちが、誰に気兼ねすることなく、お互いに自由にそれぞれ自分の意見を表明しあうことが出来てこその民主主義です。
国家から表現活動を制約されないのは当然として、さらに、多くの市民や市民団体にとっては、公共施設の利用や自治体からの後援といった表現活動に対する「援助」がなければ、表現活動を十分に行うことが出来ないのが現実です。
「政治的中立性」を口実に、市民や市民団体に対して援助をしないという取り扱いがはびこることによって、市民らが、自治体から援助が受けられなくなることを恐れ、自由に活動をすることが出来なくなることは、民主主義の実現を阻害します。
「政治的中立性」という言葉がマジックワードとして使われることが大きな問題です。私たちの身の回りにあるいろんな問題は、多かれ少なかれ、政治的な問題です。
そのため、「政治的中立性」を口実にすれば、自治体が恣意的に特定の団体は援助をせず、別の団体には援助をするといったことで、時の権力者に都合の良い活動だけが優遇されることになりかねません。
意見交換では、ジェンダー問題を取り上げる集会をする場合に特に風当たりが強いように感じるが、テーマが誹謗中傷を受けやすいものだからではないかという意見や、自治体がヘイトスピーチを規制する施策をとっているときに、ヘイトスピーチをする集会については後援しないという決定がされる場合もあり得るので、自治体が後援するか否かは市の施策との関係で決定している面もあるのではないかという意見など、たくさんの発言があり、活発な意見交換がなされました。
次回の北大阪セミナーは2025年6月13日に開催します。
「『IRカジノ住民訴訟と万博問題」-住民訴訟で明らかになった実態と万博現地調査-」というテーマで、米田弁護士にご報告いただく予定です。
ぜひご参加ください。